「アメリカ海軍メニュー·1941年版」ローストビーフ

「アメリカ海軍メニュー·1941年版」序幕+ハーバードビーツ

「アメリカ海軍メニュー·1941年版」ローストビーフ

牛肉を食用する伝統がある文明には、「ローストビーフ」という料理は必ずに存在する。アメリカ海軍も然り、彼ら海の男児のとって、ローストビーフはただの伝統料理ではなく、海軍文化そのものの一部でもあるのだ。酔っ払い達の派手な喧嘩をテーマとした唄「古き良きイングランドのローストビーフ(Roast Beef of Old England)」がいまだ海軍総部の正式晩餐会の定番曲であることがその証拠である。とある友人の話によると、晩餐会においてこの曲は肉料理と共に登場するらしい。

(以下はUSNB(海軍軍楽団)の演奏、ご静聴願う)

この手の小唄は覚え易くてかなりの人気ものだ。それに歌い手の頭の回転さえ早ければ、歌詞は無限に即興創作し続けられるのがその美点だ。昔海軍所属のイギリス系アメリカ人の士官達は、酔った後によくこのような小唄を口ずさみながら舎弟らを率いて南方人に盛大に喧嘩を仕掛けたという、一時は随分と人事部門の連中らを困らせていたらしい。

具体的な歌詞については…大部分の内容はフランスへの悪口と飯への文句である。こればかりは仕方ないことだ。当時の海軍本部は資源節約という名目で(実はただ手間を省けたいだけ)兵士達の大好きな大きな角切り肉や焼き肉などの肉料理を全部フランス式シチューとスープに変えたんだから。こんなふざけた状況は海軍が完善な食品冷凍技術を手に入れるまでずっと変わらなかったという。

【1941年美国海军食谱】烤牛肉

オリジナル:ニューイングランド
味の傾向:鮮味、塩辛い
調理時間:肉の大きさによる
原料:

  1. 焼き肉:
    • 一等もしくは二等牛肉1ブロック。
    • 香辛料:個人の愛好による。アメリカ海軍版は塩+胡椒+ニンニク。
    • 焼き肉専用の温度計一個。
  2. 肉汁:
    • 小麦粉1小カップ、具体的な量は肉汁の総量と比例する。
    • 水もしくはお肉のお出汁、量は肉汁の総量と一致する。
    • ウスターソース。量は肉汁総量の三分の一。
    • アキノタムラソウの葉少量。

調理手順:

  1. アメリカ流焼き肉の作り方はほぼ共通している:解凍、味付け、肉を焼く、レスティング、完成。
    1. 解凍:肉1ポンドの完全解凍には3-5時間ほどの時間が必要だ。解凍は冷蔵庫内部で進行する(常温で解凍すると肉の品質に影響する)。よって、正規の海軍焼き肉を百人分作るには、まず大きな肉の塊を6-8ポンド(2.7-3.6kg)ほどの小さい塊に切り分ける必要があり、料理前夜から下準備を始める必要がある。

      【1941年美国海军食谱】烤牛肉
      「違いははっきりと分かるでしょう?」

      米軍において、肉の品質は三種類ある:Prime(一等),Choice(二等),とSelect(三等)。二戦時、民間人が買えるのは二等と三等だけ(一等肉は主に海軍に供給される)。しかし、ここで言う「品質」は肉自体の質ではなく、肉汁の含有量と脂肪量によって決められる枠組みだ。今時では一等肉を入手するには、専門家の肉屋さんに依頼するしか方法はない。

    2. 味付け:アメリカ海軍流の作法は予め混ぜた塩と胡椒を手で直接に肉に塗れる。今ではスーパーで調味済みの焼き肉垂れを購入出来るので、自分の口に合った味と量を入れてもよし。
    3. 肉を焼く:肉をオーブンの上層に置いて、下層にステンレスバットを置く。ステンレスバットで集めた肉汁は後にグレービーの原料となる。肉を置く時に、脂肪が多い部分を上に向かせる必要がある、さもないと焼き肉の見た目と味は悪くなる。そしていくら肉の量が多いでも、焼いてる間は肉同士を畳んではならない。普通の家庭なら、肉を焼く時にじゃが芋などの野菜も一緒に入れるのが常識だが、二戦時のアメリカ海軍ではその手の肉にあしらう野菜類は専用の小さなオーブンで焼くらしい。

      牛肉烤架
      「上層は肉、下層は滴る肉汁を集めるためのステンレスバット。
      なお画像の肉は本文とは無関係。画像来源はsimplyrecipes.com」

      オーブンを低温・ゆっくり焼きモードにセット、具体温度は325℉(162℃)。6-8ポンド(2.7-3.6kg)の肉を焼くには最少でも三時間が必要だ(1ポンドにつき半時間)。焼き加減は肉の中央に刺さる温度計によって調整可能です。例えば私はミディアムレアが好きなので、中央温度が140℉(60℃)になるくらいでちょうどいい。焼き肉の焼き加減はミディアムウェルダンを超えると干からびちまうのでくれぐれもご注意を。

      「アメリカ海軍メニュー·1941年版」ローストビーフ
      「以上は肉の焼き加減の図解だ。皆さんは自分で好みで選ぶがいい。
      私が知る限り、東洋人は概ねミディアムウェルダン以上の焼き加減が好きだ。」
    4. レスティング:よし、数時間をかけて肉が焼かれるのを見守った後、中心温度はようやく規定値に上がりました。これからは肉をオーブンから取り出して、アルミホイルで包んだり、もしくは密封した入れ物に入れる必要がある。この手順が英語で言う「レスティング」であり、アメリカ流とイギリス流の焼き肉の作り方の一番違うところである。ここで直接肉を皿に乗せるイギリス流と違って、アメリカ流の焼き肉は15-20分のレスティングを経て、内部温度が更に上昇し、外形がより美観になるだけではなく、ついでに肉汁の漏洩も防げる。
      以下はレスティングの効果を表す画像だ、全く同じの二つの焼き肉、左はレスティング無しの状態、右はレスティング十分後の状態、区別は大きでしょう?左側の方の肉が包丁に切られる時に失われた肉汁の量と旨さの大きさは簡単に想像がつく。だから一時の辛抱は有意義なのだ。

「アメリカ海軍メニュー·1941年版」ローストビーフ

  1. もちろん、レスティングが完成するまでの時間もグレービー作りに有効活用出来る。グレービーとは西洋料理の真髄であり、その存在はフランス料理ではソースと同等に重要視されているんだが、新人指揮官の諸君には、私流のグレービーの方が一番簡単だ。

    【1941年美国海军食谱】烤牛肉
    グレービー
  2. オーブン下層に置いたステンレスバットで集めた肉汁を覚えてる?それがグレービーの原料だ。ステンレスバットから適切な量の肉汁を小鍋に移して、中火で加熱した後、水もしくはお肉のお出汁を入れる、更に二分ほど加熱した後に攪拌しながら小麦粉を入れて、更に2-5ほど攪拌する。我々の目的は程よい濃くて、ネバネバしないグレービーに仕上げることだから、手を休めては行けません。攪拌を終えた後、最後の仕上げとしてアキノタムラソウの葉を入れる。葉っぱをすり潰すかどうかは影響しない。

最後の手順は焼き肉を適当に切ること、包丁を進める時には肉表面の模様に沿った方が切り易い。肉の大きさが十分なら、残った肉汁もグレービーに入れてもいいでしょう。

では皆さん、どうぞごゆっくりお召し上げてください。


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テキスト/モルガン 編集/零火、Ethan イラスト/圣伯纳(St. Bernard) 翻訳/Printer22